みんないってしまう 読了
山本文緒先生の『みんないってしまう』を読む。
いろいろな世代の主人公が、それぞれ何かを失い変化していく短編集。
前回の、『絶対泣かない』では最後に救いがある物語が多かったような気がしたが、今回はある意味で失ったまま投げっぱなしで終わることがほとんどだった。
その為か、読後感が良いとは言えない。しかし、それぞれの短編の登場人物が抱えている不満や喪失感の描写が、どれも自分のことを指摘されているかのように的確で怖いくらい惹きつけられる。
とても数十年前に書かれた作品とは思えないほど、現代にも共通する人間の闇を見事に描き、読者に人生の選択を迫ってくる。
途中、軽い叙述トリックを利用した作品などもあり、どの話もテイストが違うので飽きることなく一気に読むことができた。