yura*'s rakugaki diary

つれづれなるままに、日くらし硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。

オーダーメイド殺人クラブ

オーダーメイド殺人クラブ

オーダーメイド殺人クラブ

2018年5月9日

 

辻村深月先生の作品を読んだ。「オーダーメイド殺人クラブ」。

 

世界から爪弾きにされて、本の中の人形のように綺麗に死ぬことを唯一の希望として生きる主人公アンと、アンからは昆虫系と揶揄されるオタクグループに属しながら、アンの世界観を受け入れ、殺すことを約束する徳川の中二病恋愛小説だ。

 

世間を騒がせる、前代未聞の殺人を演出するためにそれまで接点も住んでいる世界も違ったアンと徳川が、共通の目的を理由に連絡を取り合い、死に方の予習と称して長野から秋葉原まで遠出しコスプレ撮影会をする。

 

最後の最後まで「好き」という言葉や、「愛」という言葉は二人の間には出てこないが。少なくともアンは徳川を「友」としては認めているし、徳川を夜中に電話で呼び出したり、悲しい時に話を聞いて欲しいと思ったり、徳川の情けない姿を見てがっかりしたり、他の女性のところへ行こうとする徳川を必死に引き留めたり、というアンの行動は、ほぼ恋愛感情の現れなのだと思う。

 

徳川も、アンとの接点があった期間を過ぎた後も、ラブレターのようにアンの絵を描き続けているし、アンがサク先生のメタファーであるピアノの前で立ちはだかる「アリア」の絵は、アンが徳川の暗い衝動を必死に止めている終盤のシーンと重なる。徳川にとってもアンが唯一の救いだったのだろう。

 

最後はハッピーエンドなのだが、その裏で不幸のまま救われた描写が無い人もいる。徳川に飼い猫を殺されてしまった(あるいは死後解体されてしまった)、アンの元彼である河瀬とその妹である。

 

ただ河瀬は最後彼女を作っているので、飼い猫探しはきっと諦めてやめたのだろうし、妹も多分悲しみを乗り越えたのだろうと思いたい。

 

文庫本の解説が大槻ケンヂさんだったのだが、その文章が的確で、さらに面白いので驚いた。まず初めて読んだ辻村作品が、「オーダーメイド殺人クラブ」だったそうなのだが、その中で感じる辻村節の表現がまるでずっと辻村作品に触れていたかのような精緻さだった。さらには辻村先生の持つ独特の緊張感やその根底を支える優しさにまで言及されており、すべて語り尽くしていて、そのまま感想として載せたいぐらいだった。

 

というわけで、今日は「オーダーメイド殺人クラブ」から印象的な絵を想像して描いてみた。片腕が無い人形が、水槽の中の自分の手を見つめているという構図になっている。