プラナリア 読了
乳がんをきっかけに、厭世観に支配されてしまう主人公を描いた表題作「プラナリア」を始め、どこにでもある「普通」を手に入れることができずに苦しむ人々の葛藤や寂しさを描いた短編集。
「恋愛中毒」、「プラナリア」どちらも、当たり前の日常に潜む歪みを巧みに描いているという点に恐怖すら覚える。だまし絵で有名なエッシャーの『上昇と下降』を彷彿とさせる。
一方向から切り取ると、一見矛盾しているところは見当たらない。しかし、実際に視点が変化して違う方向から見ることで、徐々に違和感に気付き、実は、最初の視点でのみ成立する、偽りの世界だったことに愕然とする。
収録されている3話目の「どこかではないここ」では、息子と娘、会社員の優しい夫がいる、いかにも幸せそうな主婦が登場。早起きしてお弁当を作ったり、実母や義父のお見舞い、深夜のパートなどをこなすスーパーお母さん。
しかし、その一方で、家計の苦しさや、娘や夫、実母との関係、パートによる寝不足などで、頭と心が麻痺し、キセル乗車を平然と行い、息子の大学入学プレゼントであるマウンテンバイクを自分専用にし、口答えした息子を殴ることで快感を覚える、負の一面も持ち合わせている。
人間の光の部分に、さも当然のように影を差し込んでくる冷徹さ。読んでいて背筋に冷たいものが走る。光が強ければ強いほど、影は濃くなる。幸せな光景、幸せそうな人、本来読んでいて楽しくなるはずの、そういった場面が登場するたび、突然訪れるであろう闇を思って心が重くなっていく。
それでいて、手が止まらないほど読んでしまうのは、本来触れられたくない人間の本性や内に秘めた不安が、隠すことなく描写されており、どこか自分を重ね合わせてしまうからだろう。なんの不安もなく生きている人は、どこにもいないのかもしれない。
恋愛中毒 読了
山本文緒先生の「恋愛中毒」を読んだ。
別れた相手に執拗に追い掛け回され、転職を余儀なくされた男性社員の井口。その井口の勤める会社へ、元彼女から電話が来たことから物語が動き始める。
会社へ現れヒステリックになる元彼女を、ぶん殴って追い払いつつ、一方で、その異常なまでの執着心に理解を示す事務社員の女性水無月。その水無月は、社長萩原との間に秘密を抱えており、社内では萩原の愛人ではないか、と噂されていた。
井口と水無月が、萩原に誘われて居酒屋で顔を合わせる。社長が体調不良で席を外し、井口と水無月が二人っきりになったところから、水無月の長い自分語りが始まる。
伏線を張るたびに場面が転換し、まるで伏線などなかったかのように話が展開するので、どうやって回収するのか知りたくて途中で手が止まらなくなり、一気に読んだ。裏表紙のあらすじを読んだときは、悲しい静かな恋のお話なのかと思っていたが、正反対だった。恋愛小説の皮を被ったサスペンス。もしくはホラー。
井口の目線では、クールだけれど、どこか冴えず、何を考えているかわからない水無月。しかし、逆に、水無月自身の視点で語られる彼女の恋愛事情を知ると、その心の奥底に確実に存在する、ねっとりと重く深い闇を覗き込んだ気がして恐怖感が湧いてくる。
今まで水無月が冷静に観察し、描写されていたと思った世界に、気づかぬうちにヒビが入り、終盤で突然、ドミノ倒しのように崩れ去る。そして、辛い過去を乗り越えて、ようやく終わったと思っていた彼女の恋愛中毒が、実は現在進行形であることが明かされて、物語が終わる。
記憶を無くして読みたい作品リストに追加したい作品。
本来の楽しみ方とは別に、小説家創路に、北方謙三先生を重ね合わせて、楽しんでいた。「試みの地平線」はおススメ。
日立さくらロードレース参加
2019年4月7日(日)開催の第19回日立さくらロードレースに初参加。
10㎞の部だったので9時スタート。コールはないため、スタート時間までにスタート位置についていればOKで、時間に余裕があり、ありがたい。
今回は、ランニングを始めたばかりの知り合いの付き添いだったので、特に気負うこともなく、のんびりとお花見気分で参加。気温も走ると暖かいくらいで丁度良い。
8時過ぎに会場の日立シビックセンター入りだったのだが、常磐線が満員電車状態。開会式もそこそこに、荷物を預け、記念撮影スポットで写真を撮り、トイレへ。この時点で8時50分。
トイレが思いのほか渋滞していて、8時56分に会場からスタート地点へ小走りで向かう。スタート地点はシビックセンターから100mほどなので、すぐ到着。
元気なアナウンスの声とともにスタート。桜満開のメインストリートを走る。
2kmほど走ると、目の前に大海原が。絶景。海沿いの道を走る。3.5km地点でお決まりのトイレへ。なぜか、大会になるとトイレが近くなる。知り合いには先に行ってもらったが、この後追い付くのに時間がかかった。トイレによるタイムロス、恐るべし。
6km手前で折り返し。太鼓の演奏で盛り上がる。途中ハーフマラソンの先頭集団とすれ違って、その走りに見とれる。
9km過ぎに海沿いのコースが終わり、残り1km。若干の上りを終え、ゆるやかな弧を描きつつゴール。
タイムはウルトラマラソンの10km通過ぐらいだったので、景色を楽しみながら走ることができた。
昨年のレビューであった方が良いと指摘されていた、完走後のあんぱんと、記録証を入れるクリアファイル、ビニールバッグが完備されており、運営する方々の努力を垣間見ることができた。とても素晴らしい一日をありがとうございました。
はやぶさ2
小惑星リュウグウを探査中のはやぶさ2。そのはやぶさ2が衝突装置(SCI:Small Carry-on lmpactor)を切り離し、退避行動をとる状況をリアルタイムで視聴。
無事、SCI切り離し、カメラの切り離し、退避が完了。現在、カメラの映像待ち。毎秒1枚の画像を繋ぎ合わせて動画にするのだが、全データを受信し、実際に見ることができるには1週間ほどかかる模様。
約2億8千万km先のリュウグウでの出来事を、Youtubeを通して一般人も関係者と同タイミングで知ることができるというのは、非常に嬉しい。
今後も応援したい。
惑星探査入門 はやぶさ2にいたる道、そしてその先へ (朝日選書)
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asicsと川内優輝選手
アシックスが川内優輝選手とアドバイザリースタッフ契約を締結
アシックス好きの私には嬉しいニュース。アシックスのアメリカでの売り上げが低迷している中で、ボストンマラソンでの優勝経験を持つ川内選手と契約を締結するのは良い選択だと思う。
最近は、駅伝やマラソンでナイキの厚底軽量シューズである「ヴェイパーフライ4%」が目立っていて、ターサーやソーティーなどのアシックス製品が好きな私には、寂しい風景だった。
私は、割と幅広な足なので、アシックスのワイドシリーズには良く助けられた。今後もランニングシューズはアシックスを真っ先に候補にすると思う。虎走という、シューズのベロの部分の文字が好き。
ちなみに川内優輝選手の弟の川内鮮輝さんもウルトラマラソンで活躍するトップ選手。アシックスのスカイセンサージャンパンを愛用されているようで、嬉しい。(ランニングマガジン No.186 2018年7月号より)
ランニングマガジンクリール 2018年 07 月号 特集:ウルトラマラソン攻略法
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